パン生地を捏ねていると、時折ゴールの見えないマラソンをしているような感覚になります。
こねてもこねても生地に変化が見えないときは、マラソンより最悪です。自分のやっていることが正しいのか疑心暗鬼になり、一歩も前へ進んでいる気がしなくなります。
結局諦めて「もう発酵させちゃえ」と投げやりになって次の工程へ進みます。
というか、今の自分がまさにその状態で、納得いかないパン生地を1次発酵させながら記事を書いています。
今後同じような思いをせずに済むように、グルテンが形成される理屈を学び、どんなこね方をすれば効率よくグルテンを作れるのかまとめていきたいと思います。
グルテンって何?
グルテンの正体
グルテンとは、グルテニンとグリアジンという2つのタンパク質が架橋結合した高分子体(いわゆる大きな分子)です。
結合前の2つのタンパク質の「弾力」と「伸びやすさ」という特性を併せ持ちます。(フュージョンみたいでかっこいい)
おかげで気泡を閉じ込めてふわふわの食感を生み出したり、モッチリとした生地を形成できるわけですね。
架橋結合とは?:いわゆる化学反応の一つ。複数の線状をした高分子が、別の分子によって一つにつなぎ止められること。グルテン以外の高分子でも起こり、それぞれ特性の変化も異なる。グルテンは架橋結合により粘性と弾力が増すが、ポリエチレンは耐熱性や耐薬品性が増す等
どうやったらできる?
小麦粉の時点では、架橋結合に必要な水分がないため、グルテンはできません。
ここに水分(水や牛乳、卵etc)を加わり、それぞれの分子がぶつかることで架橋結合が生じ、グルテンができます。
そのために捏ねるわけですね。分子がぶつかればよいので、生地を叩きつけたり転がしたりいろんな方法があります。また、水分があれば、ただ置いておくだけでも、微細な振動により自然とグルテンは形成されます。
人の視点では動いてないように見えても、分子のサイズ感で見れば動いてるんですね
材料による影響
水分を奪う材料
砂糖は吸水性があるので、量が増えるとグルテンが生成されるための水分量が減ってしまいます。
また、パン生地を発酵させるために不可欠な酵母(イースト)も水分を必要とするため、材料のバランスによっては充分にグルテンが生成されなかったり、発酵が不十分になってしまいます。
油脂の種類と入れるタイミング
油脂には大きく分けて二つあります。
- 液状油脂(オリーブオイル、サラダ油など)
- 固形油脂(バター、マーガリンなど)
液状油脂はグルテンを柔らかく、なめらかにします。固形油脂はグルテンの生成を阻害し、クッキーやパイ生地のように崩れやすい生地にします。
固形油脂は加えるタイミングによっても生地の性質に大きく影響を与えます。はじめに加えるとグルテンが出来づらくなり、さくさくした歯切れの良い生地になり、先に捏ねて、グルテンがある程度できてからいれれば、生地の伸びを損なうことがありません。
捏ね時間の1分・5分ルール
捏ねる時間によって生地の粘度は変化していき、1分捏ねればもちもちした食感を得られます。しかし、5分を過ぎると酵素によって少しづつグルテンが分解され、粘度は落ちていってしまうそうです。
長時間捏ねてるけどグルテン膜がなかなか張らない場合には、5分を目安に捏ねるのをやめるのもアリでしょうかね
参考になる動画
完全感覚ベイカーさんはYoutubeで様々なパンの作り方を理屈と経験を踏まえて分かり易く教えてくれます。(この動画はこね方を見せるだけなので説明少なめですが、、、)
ひとつひとつの工程を「なぜやるのか?」といった疑問に答えながら説明してくれるので、よくある料理動画を見ていて生じる
動画「では20分生地を寝かせます」
わい「寝かすってなんだ?」
みたいな置いてけぼり感がありません。
この方はブログ運営もしており、パン作りに関する知識やレシピを公開しており、こちらも非常に勉強になります。
動画やブログからヒシヒシと感じるパンへの愛がファンタスティックで尊敬です。
参考
Sweets Libre https://sweets-libre.com/flour_02/
Cooking for Geeks 2016 260~264p
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